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三島由紀夫は著作「豊穣の海」の中で「人間を大きく分けると2通りに分けられる。一つはインドに行ける人、もう片方は行けない人」と言っている。
私の分け方はこうだ。「人間を大きく分けると2通りに分けられる。一つは『単細胞的思考』に出会える人、もう片方は出会えない人」
また、古人は言っている。
「人は生涯において『こいつのためなら死んでも悔いはない』と言い切ることのできる友だちを持てるか、10回以上読む本に出会えた時、生まれてきた甲斐があったといえる」と。
私はこの本を10回以上読んだ人を少なくとも10人は知っている。
今は上巻のみです。親本の詳細はここをクリック

目次 本文70% あとがき 感想BBS

本の誕生秘話 推薦 推薦 著者profile 関連書籍


Copyright (C) 2007 明窓出版, All rights reserved



















推薦の言葉

上野霄里 に つ い て ヘンリー・ミラー
──超 人 間 の 体 質──

上野と私の間には、現在に至るまで、幾年間か、文通が続けられてきてい る。そして、その量は膨大なものとなっている。彼からの便り、しかもかなり の長文の書翰だが、それを私が一、二通受けとるのに一週間と間をおくこと は、殆どない。私は、彼と彼の家族の写真を、全部手元に持っている。彼は、 彼の日常生活、原稿、絵画、教育、その他のことについて私に知らせてくれ る。私には、彼の日常生活が手にとるように鮮明に想像することが出来る。
彼の書翰から受ける、もっとも衝撃的な印象は、彼が人間発電機であるとい うことだ。彼は、殆ど、超人間とも呼ぶべき活力と生命力を所有しているよう にみえる。彼は、幼児のように好奇心に燃え、熱中する。何と不思議なこと だ。彼の写真を見るにつけ、わが国の大統領、セオドア・ルーズヴェルトにひ どく似ていると思う。この大統領は、体育や、活動的生活の擁護者の一人であ り、特に、自分の敵に関しては、絶対に妥協を許さず、言葉に衣を被せない発 言の主唱者であった。もし、上野が、権力を掌中に納めるようなことでもあれ ば、セオドア・ルーズヴェルトのように、「大きな棒」を振りまわすことをた めらわない人間になるとおもう。或る意味において、上野は、日本映画によく みかける革命的な武士、いや、もっと正しくは、悟道に足を踏み入れた武士達 を私に連想させる──つまり、無意味な斬り合いに嫌気がさして剣を棄て、確 信に支えられ、その日その日の生活を素朴に過ごしていく人間だけに与えられ ている賢さをもって、殆ど愚者と見まがわれるばかりの素朴な生活に入ってい こうと努力する武士ということなのである。
上野は、自分の行っていること、努力していることに就いては、「芸術家」 という言葉を使うことを好まない。だが、彼こそ、私が、長らく、人生の芸術 家と呼んできている型の人間なのだ。つまり、芸術の最高の形式は、生き方を 通して表現されるということをわきまえている人間であるといいたい。
後略 昭和四十四年五月二十七日



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目次




CONTENU
復刻の辞──原生のリズムに魅せられて──中 川和 也
序文上野に就いて──超 人 間 の 体 質──ヘン リー・ミラー
CONTENU

第一章原生人類のダイナミズム─原始的人間復帰への試み─
ゴンチャロフの水晶体(万葉集のポエジーをメデアとし て)
箱舟の神話(万葉集のポエジーをメデアとして)
本能の倫理(万葉集のポエジーをメデアとして)
アイデア万点行動ゼロ(万葉集のポエジーをメデアとし て)
激しさの美徳・過激の魅力(万葉集のポエジーをメデアと して)
CONTENU

第二章御詠歌ノクターン
未来は悪夢の湖の中
人間・この悲劇的存在
停止は死である
心象デッサン
「完全」という妄想
肢のない鳥
妄想するが何一つ夢をみない
火星人・脳梅毒
コサイン1の神秘
吉原では拍子木までがうそをつく
御詠歌ノクターン
偏執性は個人を豊かにする
CONTENU

第三章めざめよ、阿呆共! 洞穴の中の哲学
凹凸を平坦にする野心
全射手に告ぐ、戦闘配置につけ!
でっかく誕生!
想い出は華麗なる灰色
ノーベル賞阿呆論
文明圏・この奴隷部落
CONTENU

第四章悪魔も故郷に帰ると天使になる 失敗は平然と犯せ
ポンペイは火で亡んだ
帰郷性・回帰性
Home de terre
四次元の運動の法則
感情の論理
ミラーと西鶴
わざわざ人してしめし候
私は辛生まれ
CONTENU

第五章人と同じことしかやれない奴はぶち殺せ
山はおぐら山(清少納言・イン・ヌード)
円満解決という敗北の形式
ヒルヴェルサムから
胸に手榴弾を三発ぶら下げる
無カタラーゼ症患者
耳を失した男のメルヘン
誰もが自分の中の神話をみつめている
技巧というもっとも下手なテクニック
CONTENU

第六章断絶の知性 文明的秩序・魂に生えた黴
人間の存在は本来奇蹟そのものである
何もしないことの罪
欲求不満の大樹海
勇気ある人間しか生きられない
行動は人間の骨格である
小説の時代は了った
群衆の中の孤独・平均が意味を失う時代
衝動の美徳
神秘性は人間存在の実証である
CONTENU

第七章天使の眼を具えた怒れる虎─ウイリアム・ブレイク論─
序章・俺が自分を信じた日には奴らは皆殺し だ!


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私がものを書こうとする時、私は、従来の文学の在り方を軽蔑する思い にあふれている。
私がものを考えようとする時、私は、一切の論理に対する不信の気持を かくしおうせないで戸惑う。
私がものを言う時、それは、一つの例外もなしに、私自身の怒りの声で あり、訴えの叫びである。
私が自分自身について語る時、それは、徹底して骨の髄にしみこんだ言 葉であって、現代人の妄想を吹き飛ばそうとする意欲に燃えている。私は私自 身を語ることに依って生きのびる。
私が愛と崇拝の思いをこめて神を語る時、私の内部には、一切の既成宗 教組織に対する絶望的な意識をどうすることも出来ないでいる。私の祈りの香 気は、現代社会に対して向けられる怒声の中にくゆらいでいる。
私が自著を出版し、世に問おうとする時、マスコミやジャーナリズムの 急所に寄生している癌細胞にも似た、ほとんど快癒不可能な病根に対して、限 りない怖れをおぼえる。それらは完全に化石と化してしまっている。
私はここではっきり言っておきたい。孤立してもいい、人間は何として も生きなければならない。
私の書いたものは、既に、二、三十巻の大全集になる位の厖大な量にな っている。そして、その中の一行半句ですら、私の血を沸き立たせずに書いた ものはなかった。背後で出版社からの人間がせきたてているようなせわしさと 意気込みで、猛スピードで書きつづった。私は、全く出版するあてのない時点 において、短距離走者のような勢いで、しかも、期待と喜びにあふれた心で書 きつづっていけるしあわせな男である。出すあてがなくては一行もペンの進ま ない大文士と大いに違っているこの自分を心から喜びたい。私は一度として、 商売気を出して書いたことはない。また今後もないであろう。
私は一度として、自分の作品を本にしてほしいと出版界に頼み込んだこ とはなかった。
私は固く信じていた。やがて私自身の「人間」に熱中する出版人があら われて、私に、出版するように依頼してくることを毫も疑ったことはなかっ た。長年一度として疑ったことはなかった。そしてそれは見事に実現した。
私は文士ではない。だが、文士達には真似の出来ない次元で書きつづける。
私は宗教家ではない。だが、宗教家達にはおよそ想像もつかない効果と 影響力を伴って、人間を回生に導いている。私は、私自身の中に、れっきとし て存在する権威に自信がある。
私は教師ではない。だが、どんな教師達よりも、はっきりと教えること の出来る人間である。
私は今、自分独りで、現代という原始林に生きる原生人間であること を、もう一度、はっきりと確認しよう。すべては、神話のように展開し、美し く過ぎていく。日々は美しくも華麗な奇蹟に依って飾られている。
佐藤文郎は、私の誇るべき共謀者であり、出版人であり、次の時代を代 表する巨大な人間像だ。彼は、私の、亡き弟の再来である。あれは、一瞬前の ことであり、百万年前の出来事だったが、私の処女出版の本を手にした時、彼 は突然、大声をあげて泣いた。私も、心の中で、彼以上に大声を張り上げて泣 いた。
東明社が出してくれた私の処女出版は、他でもない、この出版人の手に 依って世に出されたのだ。
こういう神話の中の神々の関係を、私とこの出版人は持ち得たのだ。面 と向かっては、けっこうなことを言い、陰にまわっては、それと反対の態度を とって生きている、油断もすきもない、三十億人の現代の善人や良識人の中 で、こういう得難い存在は偉大と呼ばれるに、充分価する。
シーザーの決断にも劣らぬ果敢な意志と、ソロモンの知恵にも似た賢明 さをもって本書の出版に踏み切ってくれた、「行動杜」社長立山夫妻の現実ば なれした行為を、私の手で摘んだ真心の花々で飾り度い。オリュンピヤの優勝 者の頭には月桂冠がおかれた。
私の書きなぐった、狂気のような、包装紙の裏を利用した読みにくい原 稿を書き直してくれた七人の方々の名を私の心に記しておき度い。
なお、この出版のために陰ながら協力と励ましの手をのばしてくれた世 界各国の友人の名も挙げておき度い。
フランス在住のライヴス・チヤイルズ、アメリカのジョージ・ポーレ イ、エドワード・シュヴアルツ、ノールウェイのアントニオ・ビバロ、そして その筆頭に、ヘンリー・ミラーを挙げなければならない。彼等は文豪であり、 外交官であり、文学研究家、音楽家、宗教家、実業家などであって、それぞれ に、全く別な道を歩いているが、私の著書について、わがことのように期待し ていてくれる人々である。
最後に、常に私の励ましとなってくれている妻を忘れることはできな い。ヘンリー・ミラーは彼女を指して、Elle doit 腎re une ange !(彼女は 天使にちがいない!)と書いてくれた。
(千九百六十九年九月一関)

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あ、ゴメンナサイ。立ち読み部分はここで終わりなんです。ここまで読んで下さって有りがとうございます。
このあともっと面白くなりますから買っていただけるとすごく嬉しいです。


















著者おぼえ

私がものを書こうとする時、私は、従来の文学の在り方を軽蔑する思いにあふれている。
私がものを考えようとする時、私は、一切の論理に対する不信の気持をかくしおうせないで戸惑う。
私がものを言う時、それは、一つの例外もなしに、私自身の怒りの声であり、訴えの叫びである。
私が自分自身について語る時、それは、徹底して骨の髄にしみこんだ言葉であって、現代人の妄想を吹き飛ばそうとする意欲に燃えている。私は私自身を語ることに依って生きのびる。
私が愛と崇拝の思いをこめて神を語る時、私の内部には、一切の既成宗教組織に対する絶望的な意識をどうすることも出来ないでいる。私の祈りの香気は、現代社会に対して向けられる怒声の中にくゆらいでいる。
私が自著を出版し、世に問おうとする時、マスコミやジャーナリズムの急所に寄生している癌細胞にも似た、ほとんど快癒不可能な病根に対して、限りない怖れをおぼえる。それらは完全に化石と化してしまっている。 後略

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著者プロフィール

上野霄里

岩手県一関市在住。神学校を卒業、布教のため同地に移住するが、その後教団とは絶縁する。世界各国の芸術、思想家と親交を持つ。特に400通もの書簡を交わし合った、故ヘンリー・ミラー氏とは互いに胸奥を披瀝し合うほどの間柄で、往訪も含め、深交は最晩年まで変わらずに続けられた。

主なる著書『単細胞的思考』『放浪の回帰線』『運平利禅雅』『離脱の思考』『くがねの夢』『若者へのエファンゲリュウム。』


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本の誕生秘話

知人の新井氏(画家で故人)から「よかったら読んでみたら……」とてかなり古い、だけでなく何度も読み返したと思われる本を手渡された。相当に分厚い本だ。正直気が重かった。
1週間ほど経ってから、しりごみする気持ちにむりやり活を入れ、読み始めた。結果は、完全に打ちのめされてしまった。読み進むうち、息は弾むやら、身体は熱くなるやら、無性に喉が渇き、水をがぶ飲みしながらの読了となった。
奥付を見ると、なんと!昭和44年(1969)となっているではないか。「こんなに古いのに、こんなにむちゃくちゃ人を感動させおって……ちきしょうめー」
読み終わるのを見はからったように新井さんが来社した。「凄いでしょう。明窓出版で復刻するなら著者に頼んであげようか」「お願いします、お願いしますよ」きっと涙声だったと思う。
一つ大問題にぶちあたった。なんせ66万文字もある本のことだ。タイプを外注に出すと60万円はくだらない。恥ずかしながら決断にうろうろした。
そんなある日、上野先生の講座が東京であった。胸を焦がして集まった面々15名。その中の1人が恥ずかしげに口ごもりながらも、私にとって、晴天の霹靂ともいうべきことを話し始めた。
「『単細胞的思考』を10回ちかく読んだがまた読み始めたところ、今度は、ただ読むだけでなく、ワープロ打ちしながら読んでみようと思った。これはこれで僕にとっては堪らない楽しいことだった」と。
会が終わるのを待ちかねて私は彼に必死にすり寄った。彼の快諾を得て、無料でデータの提供を受け、この本は永い眠りから覚めた!発売数ヶ月で、こちらも思わず嗚咽がこみ上げるほどのハガキを多くの読者から受け取った。
最後になったが、きっかけを作ってくれた新井氏の絵をこの本のカバーに使い、これも大喝采をうけた。今でも思い出して胸が切なくなるのは刷り上がった本を見せる前に彼が帰らぬ人になったことである。

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