>『単細胞的思考』につづく、現代神話シリーズ第二 輯。無限の時間と空間にはさまれて生きる健康な子となるために、この著者は 現代社会で、敢て無用な人間になることを試みる。この著者は、現代文明とい うものが、もっとも典型的な失墜の状態を示していると叫ぶ。太陽も水も空気 も、もはや抽象でしかなくなってしまった妄想の世界を、明確に読者に示す。 著者は、この悪夢にも似た幻覚の世界で、必死に眼をさまそうとする。現代文 明の亀裂の中から全く別種の可能性の蘇ってくることに読者は狂喜するはずで ある。

見かけは進歩と発展を誇っている文明の社会と、そ こに生きている人間の真実の姿を容赦なく暴きたてる上野の独特の手法は定義 づけるのが困難である。日常的常識に保護されている社会正義から見れば、こ れはただごとではない反逆の精神に溢れている。微温湯に長らく浸かりきって いる芸術や文学から見れば、明らかに異端の要素が見られる。上野は文明の体 制に隠されている悲劇性と欺瞞の体質を暴きたてる。賢明な読者は、上野の行 間に人間本来のやさしさや正義をくみ取る。
 上野という多面性にあふれた強烈な個人に出会うこ とによって、人間の本来あるべき原点を目撃する。上野は文学や思想を表現し てはいない。彼の全存在を熱しきった白書形式を通して表現している。彼の言 葉は、熱しきっているが故に言葉のままでは読者の生き方に浸透していかな い。溶解し、爆発し、飛散する事によって生じる、脈々とした生命のリズムと なって迫り食い込んでいく。
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